笛吹権三郎(ふえふきごんざぶろう)
今の三富村(旧上釜口村)というところに年老いた母と幸せに暮らす権三郎(ごんざぶろう)という若者がいました。権三郎は笛を吹くのが大好きで村人たちも聞き惚れていました。ある年の夏(1575年7月と伝えられる)、豪雨のため川(子酉[ねとり]川)が氾濫し、権三郎の家は流されてしまいました。濁流の中、権三郎は母と離れてしまいました。運良く権三郎は岸にたどり着き助かりましたが、母の姿は見えません。川が静まってから権三郎は毎日毎日母が好きだった笛を吹きながら母を探して歩きました。いつしか冬が過ぎ、春が来ました。それでも権三郎は独り母を探しました。しかし、笛の音が聞こえなくなりました。権三郎は川下の淵で深みにはまり死んでいるのが見つかりました。村人たちは手厚く葬ってやりました。この川は「笛吹川」と呼ばれるようになりました。